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2008年12月 アーカイブ

2008年12月 2日

デフレーション

デフレーションとは、インフレーションとは逆の現象でモノの価格が継続的に下がる(貨幣価値が継続的に上がる)経済現象のことを指します。要するに物価が継続的に下がるということを指し、デフレーションの進行は経済にって非常に多くの悪影響をもたらすとされています。略称のデフレと呼ばれることもあります。

物価の下落は家計にとっては歓迎すべきものかもしれませんが、物価が下がることにより企業は期待する収益を得ることができず、さらに価格の値下げ圧力が働きます。結果的に企業としては収益を得ることが難しくなり、それが労働者にとっても給与や賞与(ボーナス)といった形で悪影響を与えることになります。さらに、デフレーションが進行すると、消費者ももう少し待てば値段が下がると考えてますます諸費を抑制し企業業績が悪化していきます。このように、デフレーション(デフレ)は経済的に景気に対して非常に悪影響を与えるものとされています。

デフレスパイラル

デフレスパイラルとは、デフレーションによる景気後退によりさらにデフレーションが進行するという、物価と景気悪化がらせん状に継続する現象のことを差します。日本では1997年~98年にかけてデフレスパイラルの傾向が見え大きな社会現象となりました。

デフレスパイラルとはデフレの進行が企業業績を悪化させて、企業業績の悪化により企業の人件費削減やリストラなどで家計の所得が減少し、家計は消費をさらに抑制し、それによりモノがさらに売れなくなり、企業業績の更なる悪化、そして人件費削減というように、らせん状にデフレが進行する現象のことを指します。デフレーション(デフレ)の最も最悪な形とされています。

ディスインフレーション

ディスインフレーションとは、「インフレが起こらない状態」という現象のことを差します。日本においては石油ショック以後物価の大きな値上がりのないディスインフレーションの状態にあったといわれています。

日本は高度経済成長期や石油ショックの際など、日本の消費者物価指数は2桁ものインフレ率があったというデータが残っています。しかし、その後は物価が急激に上昇する(高いインフレ率)というケースはほとんどありませんでした。こうした物価が下がりはしないが極端に上昇はしない状態のことをディスインフレーションと呼びます。しかし90年代後半には消費税の引き下げや大きな金融機関の破綻だとがきっかけとなり景気は急速に悪化し、それに伴いデフレーションの傾向がみられるような状態となりました。実際1999年~03年までは5年連続で消費者物価指数はマイナス成長を記録しています。

インフレターゲット

インフレターゲットとは、物価上昇率(インフレ率)に対して中央銀行(日本銀行等)が一定の目標値を定めることを指します。インタゲと略されることもあります。景気にとっては適度なインフレが望ましいとされう事から、マネーサプライ(通貨供給量)を意図的に増加させたり、金利水準を変化させることで緩やかなインフレを引き起こす政策のことを指します。

日本においては、1990年後半におけるデフレーションに対して、デフレスパイラルの解消を図るという見地から、インフレターゲット論が台頭することになりました。しかし、現実にはこのインフレターゲット政策が実行されることはなく、量的緩和政策や、2003年から実施された円安を維持するための大幅な為替介入などにより景気が回復傾向を見せて、インフレターゲットについては実施されることはなかった。

量的緩和

量的緩和(りょうてきかんわ)とは、量的金融緩和政策ともよばれ日本銀行(日銀)が2001年~2006年まで実施していた金融政策の一つ。金融政策の中でも金利(公定歩合)の上下ではなく、日本銀行の当座預金残高の調節により金融緩和を行うことを指します。

2008年12月 4日

資産デフレ

資産デフレとは、デフレーションでも土地や不動産に代表される資産の価格が下落する現象のことを差します。土地の値段についてもモノと同じように需要と供給のバランスにより決まっています。日本では特に90年代以後の長期景気低迷において不動産に対する需要が減少し地価が大幅に下落するという資産デフレに見舞われました。

資産デフレは日本経済において土地を担保としてお金を貸すことが多かった銀行に対して不良債権という形で大きく影響をおよぼし、この処理が遅々として進まなかったことが長期にわたる景気低迷の原因であったとも言われています。

消費者物価指数

消費者物価指数(しょうひしゃぶっかしすう)とは、国内の物価水準を測る為の経済指標の一つです。物価とはある国における一定期間におけるモノやサービス価格の平均値を指します。消費者物価指数は普段買っているモノやサービスの価格を示すデータとなっています。

消費者物価指数においてはそれぞれで重要度の高い品目をピックアップしてそれらの値段が基準となっている年の値段と比べてどれだけ上昇しているか下落しているかを指数として集計する指標です。物価実態を的確に表せるように工夫されており、一般的に物価が上昇傾向にあるというような場合は消費者物価指数が上がっているということから言われることが多くなっています。

購買力平価

購買力平価(こうばいりょくへいか)とは、世界各国における物価水準の比較に用いられる通貨の換算レートのことを指します。例えばアメリカと日本で買えるモノの現地価格を比較することで算出できる指標の一つです。

ある金額を持っていても時代や場所により購入することができるモノやサービスの量は異なります。この一定のお金でモノやサービスを変える力のことを「貨幣購買力」と呼びます。各国間の為替は日々変動しておりますので、国ごとの貨幣購買力も異なってきます。これを換算するために一つのモノや各国の通貨で購入するにはいくら払えばよいのかを示す指標が購買力平価です(PPPと呼ばれることもあります)。
例えば日本とアメリカの購買力平価を考える場合、同じ品質を持つ商品の価格が日本では1,000円、アメリカでは12ドルという場合、円と米ドルは1000円=12ドルと同じ購買力を持つと考えられます。すると1ドル=83.33円というように計算することができます。
なお、一般的に購買力平価の統計としては内閣府またはOECD(経済協力開発機構)が集計発表しています。この購買力平価については為替レートに対する水準としても影響を与えるとされ、為替レートは購買力平価により決定されるという理論のことを「購買力平価説」と呼びます。

失業率

失業率(しつぎょうりつ)とは、就業したいと考えているものの就業できない(しない)人が労働人口に対してどれだけいるかを示す統計指標です。完全失業率と呼ばれることもあります。日本では従来終身雇用や年功序列などの雇用慣習により失業率は他の先進国と比較しても低い水準にありましたが、近年は雇用の流動化が進み景気により大きく左右される指標の一つとなっています。

失業率の計算においてよく用いられる「完全失業率」とは以下のような定義がされています。
「労働人口に対する以下の(1)~(3)の人の割合」
(1):就業が可能であり、これを希望している人
(2):仕事があればすぐに就職できる状態にある人
(3):現在求職中の人

このため、労働年齢であっても学生や浪人生、就職を希望していない人などは失業者としてはカウントされません。一般に失業率は景気の状況を色濃く示す経済指標の一つとして注目されています。指標として、企業が人を解雇するのは比較的景気が悪化した段階で行われ始めるとされており景気指標として、失業率は遅行指標に分類されます。

雇用のミスマッチ

雇用のミスマッチ(こようのみすまっち)とは、近年言われている雇用情勢に関するキーワードの一つです。求人数は多いものの求職者と求人側の求めるニーズに違いがあることから、求人数は多いものの、失業率(失業者数)が減らないという状態を指します。

例えば企業側はある程度社会経験を積んだ20代後半の正社員経験者を雇用したいというニーズが高いのに対して求職者側は非正規社員としてしか経験を積んだことがない人だったりする場合などが代表的です。この他にも様々な分野や状況で雇用のミスマッチが起こっており社会問題の一つとされています。

雇用調整

雇用調整(こようちょうせい)とは、景気の状態や企業業績等の状況などにより事業活動を増減させることにより生じる労働力に対する需要に対処することを指します。一般的には、残業の調整・非正規職員の増減・正社員の増減などがこれにあたります。

一般的に企業が雇用調整を行う場合は以下の順序で雇用調整を行うとされています。

(1):残業の調整
景気が良くなったり業績が伸びて労働需要が伸びた場合や逆に景気の悪化や業績の悪化などにより労働需要が減少した場合に最初のとられる雇用調整の一つです。残業時間を延長したり、逆に残業をしないようにさせることなどが挙げられます。

(2):非正規職員の調整
景気が良くなったり悪くなったりすることで、残業の調整では労働需要をカバーできない場合、企業は次にアルバイトやパートタイマー、契約社員や派遣社員といった非正規雇用の職員数の新規雇用または解雇を行うとされています。

(3):正規職員(正社員)の調整
非正規雇用職員では対応できないほど労働需要が変化した段階において企業では正規職員数の増加やその解雇などに踏み切ることになります。

上記の通り(1)→(3)の順序で雇用調整を行うことが多いです。これはその実施のしやすさと必要なコストから行われるとされています。残業の調整程度であれば人員を増やす必要はありませんので、みんなに少し我慢してもらうことで対応できますが、正社員の雇用や解雇ともなると、膨大なコストが必要となります。近年になって、非正規職員が増大してるのも、長期の不景気を経験した企業が、雇用調整がしにくい正規職員ではなく、雇用調整しやすい非正規職員を増大させたことが原因の一つであるとされています。

終身雇用

終身雇用(しゅうしんこよう)とは、企業が正規雇用した労働者を特別な場合を除き原則として解雇せずに定年まで雇用し続ける制度のことを指します。従来型の日本型経営の特徴とされており1980年代公判まではこういった雇用制度が一般的でしたが、1990年代の景気悪化以後、こうした日本的な雇用関係が崩れつつあります。

現在では、成果主義と呼ばれる欧米型の雇用関係が一般化しつつあり、非正規雇用(パート・アルバイト・派遣社員・契約社員)などの数が増加しており、転職市場も活発化し雇用の流動化が進んでいます。ただし、一部では従来の終身雇用制度を見直す動きもでてきています。

雇用の流動化

雇用の流動化(こようのりゅうどうか)とは、転職者数や転職率、離職率が増大する現象のことを差します。従来の日本の雇用形態は終身雇用が中心でしたが、成果主義や企業の非正規社員の雇用拡大により転職市場が拡大し、雇用の流動化が進んでいます。

メリットを言えば、成長産業などへ優秀な人材が流入し産業が活性化するという側面もありますが、それにあぶれた人や非正規雇用の増大などによる格差社会の進展という負の側面もあります。終身雇用・年功序列賃金から成果主義へと企業が雇用関係を大きく舵を切ったことにより一気に流動化が進みつつあります。

年功序列賃金

年功序列賃金(ねんこうじょれつちんぎん)とは、従来型の日本型経営の代表的な雇用関係を示す言葉。企業に勤めた年数(勤続年数)が長くなるにつれて賃金も上昇していくというもので、従業員の安定的な雇用を示す終身雇用と並び日本型経営の特徴的な形態とされてきました。

しかし、1990年代の長期にわたる不況とIT企業の躍進、M&Aの活発化などにともない、成果主義に台頭される欧米型の雇用関係に日本企業の移行によりこうした年功序列型の賃金制度はかなり早い勢いで衰退してきています。

2008年12月 5日

成果主義

成果主義(せいかしゅぎ)とは、欧米型の企業経営に多く見られる従業員の評価システムのこと。日本型経営の代表的な雇用関係である終身雇用制度や年功序列賃金の対義語とシテ用いられることが多い。企業が従業員を評価するにあたって、その従業員やチームが果たした成果に対して賃金面や待遇面などで評価を行う人事制度の事を指します。

企業における役職や賃金といった待遇をその人が成し遂げた結果を重視する方法のことを指します。1990年代以後は日本企業の多くがこうした成果主義的な制度を多く採用するようになりました。

2008年12月14日

格差社会

格差社会(かくさしゃかい)とは、国内における国民間での所得額や資産額などについて格差がある問題または格差が拡大するという問題のことをさします。主には、正規雇用社員(正社員)の数が減り、派遣労働やパートタイムなどの非正規雇用社員の増大などの問題と絡めて議論されることが多い問題です。

ただし、ジニ係数(所得格差の度合いをしめす指標)などでは必ずしも格差が進行しているとはいえないなど、その捉え方については専門家の間でも議論されています。格差の実態については様々な調査期間などにより様々な統計が取られているが、これらの格差については、専門家の間でも評価が分かれており明確とはされていなません。
2008年現在において日本の格差の度合いについては、他の先進諸国と比較するとかなり低い水準にあるといわれています。

ジニ係数

ジニ係数(じにけいすう)とは、国家内における所得水準の格差を示す指標です。結果が「1」に近いほど格差が進行しているとされ、「0」に近いほど平等な状態であることを示します。日本においては、80年代から緩やかな上昇傾向にありますが、格差社会が社会問題となったここ数年間において極端な上昇傾向は見られません。

字に係数は所得が完全分配されている状態(すべての国民が全く同一の所得を得ている状態)と比べてどれだけ分配に偏りがあるのかをしめす指標です。世界的にも広く利用されている指標の一つです。一般的には0.2~0.4程度が一般的な範囲とされており、0.5を超える場合は非常に大きな貧富の差があるとされており政府による是正が必要であるとされています。

なお、OECDの統計による、先進国におけるジニ係数は2000年時点で以下の通りです。
日本:0.314
アメリカ:0.357
イタリア:0.347
イギリス:0.326
スウェーデン:0.243

上記からも自由主義的な国においては比較的ジニ係数は高い傾向が見られ福祉社会的な国家は国家による所得の再分配が強いことからジニ係数も低くなる傾向があるといえます。

2008年12月16日

財政政策

財政政策(ざいせいせいさく)とは、政府における支出(歳出)を通じて経済に対して影響を与える政府が行う経済政策の一つ。日銀などの中央銀行が行う金融政策と同一に語られることが多いです。景気対策として使われることが多い用語ですが、様々な場面で用いられています。

そもそも政府は税金や国債の発行などをつうじて集めたお金を使い公共設備を建設したり様々な行政サービスを提供します。政府の収入のことを歳入(さいにゅう)、政府の支出のことを歳出(さいしゅつ)と呼びます。

財政政策には大きく3つの役割があります。

一つ目は民間(市場)に任せていては提供されない(またはされにくい)サービスを国家として行うことです。代表的なものとして道路や上下水道などの公共インフラを整えたり(公共投資)、警察や消防、国防といった行政サービスを提供したりすることなどが挙げられます。

二つ目は税金を使って富の移転を行うことです。例えば高所得者から集めた税金を社会的弱者などに社会保障といった形で現金やサービスを提供することにより、国家が仲介して格差が大きくなりすぎることを抑える働きが挙げられます。所得税が累進課税となっているのはこの富の移転をより大きく行うためです。

三つ目は景気のコントロールです。景気が過熱している場合は財政支出を抑えることにより景気の過熱を抑えたり、逆に景気が悪化した場合は財政出動(歳出を増やすこと)や減税を行うことを通じて景気を刺激します。

このような働き全体をコントロールする政策のことを「財政政策」と呼びます。

公共投資

公共投資(こうきょうとうし)とは、道路や橋、トンネル、上下水道など国民が利用する社会的なインフラや施設を作ることを指します。公共事業と呼ばれることもあります。理論的には公共投資は乗数効果(じょうすうこうか)によりより多くの有効需要を創出しGDPを拡大させる作用があります。

経済においてはどれほど作り手がサービスを生産(供給)してもそれを購入する需要がなければ旨く回りません。不況時(不景気)などは個人や企業の所得が減っていますので世間の有効需要が小さいといえます。こうした場合に政府は道路や施設などの建設等をを積極的に行うことにより需要を喚起します。こうした行動のことを公共投資と呼びます。

もちろん、公共投資は不景気でない好景気のときにも行われますが、特に不景気の場合は需要を喚起するために大規模な公共投資が行われることが多いです。ただし、戦後まもなくとは異なり、公共インフラが整備された現代社会においては建築に対する公共投資は必ずしも波及効果の大きい有効需要を生み出しにくい環境となっています。
そのため、近年では公共投資についても建築だけでなく、どういった分野に対して資金を投じるべきなのかも議論されており、建築物に対する公共投資は減少傾向にあります。

減税

減税(げんぜい)とはその名前の通り、これまで課していた税金の額や率を小さくしたりなくしてしまう政策の事を指します。一般的には景気悪化時などに政府が行う財政政策の一つとされます。逆に税金の額や率を挙げることを増税と呼びます。

減税が実施されると、税金として所得から差し引かれていた分が引かれなくなることから、可処分所得(自由に使える所得)が増大します。可処分所得が増大すると消費者は一部を消費に回します。消費者が消費を行うと、企業の酒席が悪化し業績が回復する、その結果、労働者の所得が増大し…といたように良い循環を作ることが目的となります。

ただし、減税=景気回復と必ずしもうまくいかない場合があります。個人の可処分所得が増大してもそれが全て貯蓄にまわり消費に回されなければ消費は拡大しないたため、景気に対してプラスの影響を与えることはありません。

このほか、減税は政府が好ましいと考えている流れを作る場合にも用いられることがあります。特定の分野に対して所得税や法人税などを引き下げることで、そうした分野への進出を促進するという効果を生み出すことがあります。

2008年12月18日

国家予算

国家予算(こっかよさん)とは、国における歳入と歳出のことを指します。大きく国家予算は基本的な予算である「一般会計」と特定の政府事業のための予算である「特別会計」に分類することができます。ただし、一般に国家予算という場合は一般会計の予算のことを指す場合がほとんどです。

2007年度の国家予算規模はおよそ80兆円となっており、収入は税収が65%で残りは国債の発行によりまかなっています。一般会計の半分近くは社会保険費や社会福祉費などの社会保障関連の歳出が締めています。今後も高齢化の進展により社会保障費の増大は不可避となっています。
一方で「特別会計」は特定事業を行うための予算を一般会計から分離して管理している会計となっています。近年では財政の健全化を図るために特別会計の一般会計との統合などの取り組みが進められています。

概算要求

概算要求(がいさんようきゅう)とは、国の機関である各省庁などが次年度の予算を財務省に対して要求することを指します。国の国家予算編成にあたり毎年8月末までに次年度の予算見積を財務省に提出することを概算要求と呼びます。

概算要求の内容を財務省が精査下上で協議を行い財務省が予算の原案を作成します。この財務省の予算原案(財務省原案)を元に内閣の閣議においてこれを審議決定し、国会での決議となります。

直接税

直接税(ちょくせつぜい)とは、納税義務者と課税対象者が一致する税金のことを直接税といいます。課税義務者が税務署で納税することから直接税と呼ばれます。対義語は間接税と呼びます。

直接税の代表的な税金としては「所得税」や「住民税」などが挙げられます。サラリーマンの場合勤めている会社が源泉徴収して税金を税務署等に支払っていますが、原則的には所得を得た人が納税する税金です。直接税の基本的な特徴としては、納税者の収入に応じて課税されるという点が特徴的です。
そのため垂直的公平の観点から所得(収入)が多い人に対してはより多く課税され、逆に少ない人に対しては少なく課税されます。所得税の累進課税制度などはその代表的なシステムで、一般に税率が固定されていても所得が多い人はそれだけ多くの税金を払いますが、累進課税制度の下では、所得が多い人はそれだけ高い税率が課せられることになります。

間接税

間接税(かんせつぜい)とは、納税義務者と課税対象者が一致しない税金のことをさします。対義語は直接税です。代表的な間接税として知られているのが消費税です。消費税は税金を支払っているのはモノやサービスの買い手で、納税義務者はモノやサービスの売り手となっています。

このほかの間接税としては消費税の他、酒税、タバコ税、関税などが挙げられます。間接税の特徴は所得の大きさに関わらず同じだけ消費(利用)された場合に同じだけ税金がかかるという点が挙げられます。例えば所得が1000万円の人が消費した100万円と所得が200万円の人が消費した100万円では、共に消費税は5万円となります。
間接税は所得が少ない人は所得全体から見た納税額が大きくなります。(前述の例の場合、高所得者の税率は0.5%ですが、低所得者の場合5%となってしまいます)これを消費税の逆進性と呼びます。所得税の累進課税などとは全く逆の働きをします。

累進課税

累進課税(るいしんかぜい)とは、税金の設計に関する考え方で、所得が増加するほど高い税率が適用されるという考え方です。所得税や住民税などの直接税に採用されている考え方で、日本の場合原則として所得に対して課せられる税金については累進課税税率で課税されることになっています。

累進課税とは、例えば所得が100万円までの人の税率は10%で、200万円までは15%、300万円までは20%、それ以上は30%などというように、所得が増加するにしたがって課税税率がアップするという考え方を指します。厳密には「超過累進課税」というシステムになっており、一定の金額を超過した部分にそれぞれの税率がかかります。

例えば上記の例で所得が500万円の場合を考えましょう。
1段目:100万円までの部分→100×10%=10万円
2段目:200万円までの部分→100×15%=15万円
3段目:300万円までの部分→100×20%=20万円
4段目:300万円を超えた部分→200×30%=60万円
となり、上記のそれぞれの税金部分を加えた額(105万円)が課税される税金となります。

累進課税の税金構成は所得が多い人ほど担税力(税金を支払う能力)が高いという観点から多くの税金を支払ってもらい、低所得者(担税力の低い人)を助けるという働きがあります。低所得者に対しては公共サービスや社会保障を通じて現金ではないにせよ行政サービスが提供されますので、こうした社会においては高額所得者から低所得者に対して所得の移転が起こることになります。

逆進性

逆進性(ぎゃくしんせい)とは、消費税を中心として間接税に対して言われている問題の一つです。消費税のように消費の額にたいして課せられる税金は消費額が同一であれば税額も同じになることから、所得の多い人ほど所得に占める税負担は小さく、逆に所得の小さい人は所得に占める税負担が大きくなるという問題です。

ただし、逆を言えば高額所得者はそれだけ多く消費を行うはずでありますので、消費の額に対して課税を行うことはある意味公平であるという考え方もあります。税金の割合が間接税が多く占める場合、累進課税のような高額所得者から低所得者への所得の移転が起こりにくいという問題はありますが、消費に対して課税されることにより脱税が行われにくいなどのメリットもあります。
このため、消費税などの間接税については直接税である所得税などとのバランス(直間比率)を取ることが重要であるという意見が多くなっています。

2008年12月21日

所得税

所得税(しょとくぜい)とは、日本における租税の中でも代表的な税の一つ。個人に対する毎年1月から12月までの所得に対して課せられる税金のことです(法人の所得に対しては法人税(法人所得税)が課せられます)。直接税の中でも主要な税金となっています。

個人所得税の場合、給与所得などを代表として、全ての所得を合算して課税される「総合所得課税」が原則となっています。現在「利子所得」「配当所得」「不動産所得」「事業所得」「給与所得」「退職所得」「山林所得」「一時所得」「譲渡所得」「雑所得」の10個に分類されます。このうち、源泉分離課税される所得を除いた所得についてそれぞれの控除を行った後、全て合算してそれに対して税率を掛けることで課税額が決定します。
日本の場合、一年間の所得が大きくなるほどより高い税率がかかるという累進課税(超過累進課税)という制度が採られており、高所得者ほど低所得者と比べて、所得に対して支払う所得税の金額が大きくなります。
ただし、利子所得や配当所得、株式の譲渡所得など一部の所得については例外的に分離課税(所得とは別に別途税率を持って課税される)となっています。

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