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2008年11月 アーカイブ

2008年11月 4日

景気循環

景気(けいき)とは、経済の動きを表す言葉で、よく「景気が良い」「景気が悪い」といったように用いられます。景気とは経済活動の活発さを示すもので、景気が良いというのはモノやサービスが沢山作られて売れている状態を指し、逆に景気が悪いというのはモノやサービスがあまり作られず、そして売れないという状態を指します。

単純に景気について説明すると、景気が良い状態というのは、皆がお金を使い、お金が経済の中を勢い良くめぐることをさし、逆に不景気とは皆がお金を使わない状態となります。景気が良い状態のことを好景気(好況)、景気が悪いことを不景気(不況)とも呼びます。

一般に景気は循環するといわれており、「好景気」→「後退期」→「不景気(不況)」→「回復期」→「好景気」というような流れで循環していきます。このことを景気循環と呼びます。景気が循環する理由には様々な原因があり、これらが複合的に重なって景気循環のサイクルが行われているといわれています。景気循環の原因には「在庫(キチンの波)」「設備投資(ジュグラーの波)」「建築物(クズネッツの波)」「技術革新(コンドラチェフの波)」などの原因があるといわれています。

日本国内においては戦後の好景気として「神武景気」「岩戸景気」「オリンピック景気」「いざなぎ景気」「バブル景気」などが代表的な好景気として挙げられます。しかしバブル崩壊後は景気は大きく後退してしまい以後「失われた10年」と呼ばれる長期の不況となってしまいました。

神武景気

神武景気(じんむけいき)とは、1954年~1957年までの好景気時期を指す言葉。「冷蔵庫」「洗濯機」「白黒テレビ」がいわゆる三種の神器と呼ばれた時期で、初代天皇といわれる神武天皇になぞらえて、近代日本の最初の好景気とされています。

朝鮮戦争による、朝鮮半島へ出兵したアメリカ軍に対する補給物資の支援や修理などを日本が請け負ったこと(朝鮮特需と呼ばれます)により日本経済が大幅に拡大され好景気を迎えました。

岩戸景気

岩戸景気(いわとけいき)とは、1958年~1961年までの好景気時期を指す言葉。景気拡大期間は42ヶ月と長く、前の好景気であった神武景気を上回ったことから、神武天皇(初代天皇)の時期よりさかのぼり、天照大神が天岩戸に隠れて以来の好景気として岩戸景気と呼ばれるようになりました。

岩戸景気は「神武景気」や「いざなぎ景気」と並び、戦後の高度経済成長を支えた好景気の一つです。技術革新により支えられた好景気とされており、企業の設備投資が増大して景気が大きく拡大しました。池田内閣による「所得倍増計画」が提唱されたのもこの頃で、実際にサラリーマンや労働者の収入が急増して国民に中流意識が広がっていったとも言われています。
スーパーマーケットなどの大型小売店が登場するのもこのころからで岩戸景気は「流通革命」が起きたとも言われています。
しかし、1960年度末ほどになると、消費者物価指数の上昇など好景気の末期症状が見られ、その後オリンピック景気を迎えるまで景気は後退局面に入ることになります。

オリンピック景気

オリンピック景気(おりんぴっくけいき)とは、1964年に開催された「東京オリンピック」のための建築設備投資や一般家庭におけるテレビ需要などにより生まれた好景気とされており、岩戸景気の次の好景気で1962年10月~1964年10月までのごく短い期間の好景気のことを指します。

オリンピック景気では、東京近郊の交通網整備(東海道新幹線・東京首都高速道路)、競技施設の建築(国立競技場、日本武道館)などの建築需要が高まったことや、オリンピックを自宅で見るためのテレビ需要などが大きく影響して景気が拡大した時期の事を指します。
オリンピック終了後はこれらの景気押し上げ要因もひと段落した事から景気は徐々に悪化していくことになりました。

いざなぎ景気

いざなぎ景気とは、1965年10月~1970年7月までの好景気期間を指します。57ヶ月という超長期の好景気時期のことを指し、当時は戦後最長の好景気とされていました。いざなぎとは日本神話の「いざなぎのみこと」から付けられた名称で、神武景気や岩戸景気を上回る好景気という意味で付けられた。

東京オリンピック後の不況(証券不況)を受けて政府が戦後初めて建設国債を発行したことに伴い、回復した好景気で、「3C(カラーテレビ、自動車、クーラー)」と呼ばれる商品が普及期に入ったこともあり、消費が拡大して好景気が続きました。なお、この時期に日本の経済力は大きく向上することになり、いざなぎ景気の途中で日本は米国に次ぐ世界第2位の経済大国となった。

※なお、「いざなぎ景気」は戦後最長の好景気とされてきましたが、2002年からの景気拡大がこのいざなぎ景気を超えたとされています。正式な名称はまだ付けられていないことから、「2002年からの景気拡大」や「いざなぎ景気越え」などと呼ばれます。なお、正式名称は「いざなみ景気」という名称が2008年10月現在最有力となっています。

バブル景気

バブル景気とは1986年12月~1991年2月までの景気拡大局面を指す言葉です。株式や不動産などの資産価値のバブル現象を引き起こした景気とも言われおり、その後の失われた10年と呼ばれる超長期の不況の原因ともなりました。

バブル景気は、過剰な投機による資産価値の高騰によって支えられた景気でバブル崩壊により急激に後退することになり、以後失われた10年、平成不況などと呼ばれる長期の不況の引き金ともなった好景気といわれています。バブル景気の引き金は1985年のプラザ合意とされており、当時ドル高による貿易赤字に苦しんでいた米国はG5諸国と協調介入する声明を出し、当時1ドル240円程度だった為替相場が1年後には120円台にまで急進し、日本資本が急激に国内回帰し、その資本が国内の不動産や株式市場などに流入したとされています。

特に不動産(土地)は必ず値上がりするという土地神話に支えられて、転売目的の不動産売買が増加し地価は高騰し、事実東京23区の地価が米国全土の地価に相当するほどまでに高まったとされています。さらに地価の高騰は土地保有者に対して大きな含み益をもたらすことになり、その含み益を担保とした銀行貸し付けが進み、投機が投機を呼ぶという状況に至りました。

その後、1990年3月には大蔵省(現財務省)から「土地関連融資の抑制について(総量規制)」という金融引き締め策が出されたが、実際には後手にまわった形となってしまい、信用崩壊がおきバブル景気は破裂することになりました。

2008年11月 5日

キチンの波

キチンの波とは、景気循環の一つで、およそ40ヶ月の周期を持つ景気循環とされています。キチンの波は在庫の増減に伴い生じる景気循環であるとされており、在庫循環とも呼ばれます。アメリカの経済学者であるジョセフ・A・キチンが提唱したことにより、キチンの波と呼ばれます。

キチンの波は、景気がよくなると企業は業績拡大の為に財やサービスの生産量を増大させますが、その後景気のピークを迎えた段階で生産過剰となり在庫数が増大します。企業は在庫が増大するとその在庫量を減らすために生産量を抑えたり、販売価格を下げたりして在庫処分を行います。こうなると労働力に対する企業需要も減退し、消費者の可処分所得が減少し景気が悪化します。しかし在庫調整が完了すると企業は生産量を増加し始めることにより景気は上昇局面へと入ります。

こうした景気循環をキチンの波と呼びます。「キチンの波」「ジュグラーの波」「クズネッツの波」「コンドラチェフの波」と呼ばれる景気循環の中では最も短い景気循環とされており約40ヶ月で循環するといわれています。

ジュグラーの波

ジュグラーの波とは、景気循環の一つで企業の設備投資によるものとされています。約10年(120ヶ月)周期を持つ景気循環の一つで設備投資循環、中期波動、主循環などとも呼ばれます。フランスの経済学者J・クレメンス・ジュグラーが提唱したことから、ジュグラーの波と呼ばれます。

ジュグラーの波は中期間で起こる景気循環で主に企業が投資する設備についての耐久年数が10年程度で新しい設備を購入することによる需要創出効果とそれによる景気浮動とされています。「キチンの波」「ジュグラーの波」「クズネッツの波」「コンドラチェフの波」と呼ばれる景気循環の中ではキチンの波に続き2番目に短い景気循環とされており約120ヶ月で循環するといわれています。主循環と呼ばれるように、その国の経済にとって大きな景気循環となる原因の一つであるとされています。

クズネッツの波

クズネッツの波とは、景気循環の一つ。およそ20年周期の景気循環とされています。クズネッツの波は住宅や施設などの建て替えによる需要(建築需要)に起因する景気循環といわれており、アメリカの経済学者サイモン・クズネッツが提唱したことから、クズネッツの波と呼ばれます。建築循環とも呼ばれます。

クズネッツの波は建物や施設が建築されてから約20年程度でその建築物の建て替えや大規模なリフォームなどの需要が生まれることから、そうした需要の変化による景気循環(サイクル)であるとされています。クズネッツの波は「キチンの波」「ジュグラーの波」「クズネッツの波」「コンドラチェフの波」と呼ばれる景気循環の中ではコンドラチェフの波に続き2番目に長い景気循環とされています。

コンドラチェフの波

コンドラチェフの波とは、景気循環の一つ。約50年の周期を持つ景気循環とされており、主に技術革新による景気のサイクル。ロシアの経済学者ニコライ・ドミートリエヴィチ・コンドラチェフにより主張されたことから、コンドラチェフの波と呼ばれます。

コンドラチェフの波により提唱されている技術革新による景気循環としては、1780年代~の紡績・蒸気機関の発明。1840年代~の鉄道建設。1890年代~の電気・化学。1930年代~の自動車。1980年代~のコンピュータ・情報通信(IT)などが挙げられている。
このように、人・モノ・金の流れを大きく変えてしまうような技術革新はおよそ50年に一回程度あらわれており、こうした新技術の発明および普及による景気循環をコンドラチェフは提唱しました。

「キチンの波」「ジュグラーの波」「クズネッツの波」「コンドラチェフの波」と呼ばれる景気循環の中でもコンドラチェフの波は最も長い周期の景気循環であるとされています。

2008年11月 7日

GDP

GDPとは、国内総生産と呼ばれる経済指標の一つでその国の経済力をはかるモノサシの一つとして利用されることが多い経済統計値です。GDPは一国内において生産された付加価値の合計とされます。言い換えるとモノやサービスの生産量ともいわれます。

例えば、小麦を5億円外国から輸入して、その小麦を日本の工場がパンに加工して10億円で日本の小売店に販売、小売店は消費者に対してこれを12億円で販売したとします。このときのGDPの計算は7億円となります(12億-5億)。こうした5億円の小麦を12億円のパン販売まで生産した付加価値が7億円というわけです。つまり、日本のGDPという場合、日本に住む全ての人(外国人も含む)が1年間に生産した価値の合計額のことをさすのです。

GDPは要するにその国が1年に稼ぐことができたお金の総額という意味となり、このGDPの伸び率のことをGDP成長率(経済成長率)と呼びます。なお、GDP成長率(経済成長率)は実質成長率と名目成長率の二つがあります。実質成長率とはGDPの伸び率から物価上昇を差し引いたものでより経済情勢に近いものとなり、名目成長率はGDPの伸び率だけを見たものとなります。

なお、近年は国の経済規模などを図る際にGDPが用いられることがほとんどですが、以前は「GNP(国民総生産)」という指標が用いられていました。
GDPとGNPの違いは、簡単に説明すると以下の通りです。

・GDP
日本企業の海外支社の収入:加算しない
海外企業の日本支社の収入:加算する

・GNP
日本企業の海外支社の収入:加算する
海外企業の日本支社の収入:加算しない

つまり、GDPが日本という物理的な地域を中心とした経済活動の大きさを捉えているのに対して、GNPは日本人(日本企業)という集合を中心とした経済活動の大きさを捉えているのです。

2008年11月10日

景気指標

景気指標とは、景気の状態を指し示すデータのことを指します。多くの場合、政府や民間が発表している経済統計のことを指し、その中でも特に景気と密接に関係のあるものをさします。景気指標と呼ばれるデータには多数ありますが、それぞれは「先行指標」「一致指標」「遅行指標」の三つに分類することができます。

先行指標・・・景気の変化よりも先行して動くデータ
一致指標・・・景気の変化とほぼ同時に変化するデータ
遅行指標・・・景気の変化よりもやや遅れて変化するデータ

となります。これらの景気指標の中でも特に景気に対して影響を与える指標のことを景気動向指数(DI)と呼びます。

景気動向指数

景気動向指数(けいきどうこうしすう)とは、様々な名景気指標の中でも特に景気に対して影響を受けやすい合計29の指標のことで毎月内閣府が発表している指標のことを指します。先行指標12個、一致指標11個、遅行指標6個が該当します。

景気動向指数の特徴は、一つ一つの景気指標にはそれぞれ一長一短があり、それぞれの指標だけでは厳密に景気の動向を調べることが困難であることから、複数の指標を統合的に調査することでより正確な景気の動向を調査するための指数とされています。産業や金融、労働市場など経済における様々な側面を網羅した項目をもとに算出しています。

なお平成20年現在で利用されている指標は以下の通りとなっています。

1.先行指標
新規求人数、実質機械受注、新設住宅着工床面積、東証株価指数など

2.一致指標
鉱工業生産指数、商業販売額、大口電力使用量、有効求人倍率など

3.遅行指標
家計消費支出、完全失業率、法人税収入、第3次産業活動指数など


DIとCIについて
平成20年4月速報値から、これまでDI(ディフュージョンインデックス)中心の発表体系からCI(コンポジットインデックス)中心の発表体系へと変化しています。
DIとは、良い指標の数から悪い指標の数を差し引いた指標発表方法で景気の状況や度合いなどを把握するのに優れています。逆にCIとは、景気の強弱を定量的に計測することを目的としたもので、景気の山の高さや谷の深さや勢いなどを示す指標とされています。

2008年11月11日

先行指標

先行指標(せんこうしひょう)とは、景気の動向を示す経済統計の中でも、特に景気に先駆けて動く指標の総称です。将来の景気がどのようになるのかを予測する上での材料として活用されます。

代表的な先行指標としては、新規求人数、新設住宅着工床面積、耐久消費財出荷指数、消費者態度指数、長短金利差、東証株価指数、総資本営業利益率、中小企業売上げ見通しDIなどが挙げられます。これらは内閣府が発表している景気動向指数に採用されています。
なお、先行指標以外にも「一致指標」「遅行指標」などが景気動向を測る指標として活用されています。

一致指標

一致指標(いっちしひょう)とは、景気の動向を示す経済指標のうち、景気の動きとほぼ同時期に変動を示すとされている経済指標の総称です。現在の景気状況がどのような状況なのかを把握する上で活用される指標です。

具体的な一致指標として、鉱工業生産指数、大口電力使用量、製造業稼働率指数、所定外労働時間指数、小売業商業販売額、全産業営業利益、中小企業売上高、中小企業出荷指数、有効求人倍率などが挙げられます。これらは内閣府の発表する景気動向指数における調査項目でもあります。
なお、一致指標以外にも「先行指標」「遅行指標」などが景気動向を測る指標として活用されています。

遅行指標

遅行指標(ちこうしひょう)とは、景気動向を示す経済指標の中でも特に、景気の流れよりもやや遅れて現れてくる経済指標のことを指します。遅行指標は主に後から当時の景気状況を把握するための確認として用いられることが多い指標といえます。

具体的な遅行指標としては第3次産業活動指数、常用雇用指数、実質法人企業設備投資、家計消費支出、法人税収入、完全失業率などが挙げられます。これらは内閣府が発表する景気動向指数でも利用されている経済指標です。
なお、遅行指標以外にも「先行指標」「一致指標」などが景気動向を測る指標として活用されています。

2008年11月12日

経済成長率

経済成長率(けいざいせいちょうりつ)とは、製品やサービスの生産・消費の規模推移から経済の成長を図るデータのことを指します。通常、経済成長率という場合GDP(国内総生産)の伸び率である「実質GDP成長率」のことを指します。

国の経済というものは、モノやサービスの生産を通じて、技術の改良や新システムの導入などにより基本的にそれらの生産量というものは大きくなっていきます。戦後日本の経済成長率は極めて高い水準を維持し、特に1960~70年代は高度経済成長期と呼ばれ年率で10%以上の経済成長率を記録しました。その後のバブル景気崩壊後の日本経済は成長率1%以下と鈍化し、97年と98年にははじめてのマイナス成長(経済成長率がマイナス)となってしまいました。その後、本格的に回復に向かい「いざなぎ景気越え」と称される長期的な経済成長をしています。

DI

DI(ディーアイ)とは、日銀短観で派票される業況判断指数DIが有名ですが、「D.I.」とはDiffusion Index(ディフュージョンインデックス)の略称で、景況感などの判断を指数化したものです。DIの算出方法は、判断項目について「良く」「普通」「悪い」の三つの選択肢を用意し、それを単純集計して「回答数構成百分比」を算出し計算式により計算して求めています。

DI=(第1選択肢(良い)の回答数構成百分率比)-(第3選択肢(悪い)の回答数構成百分率比)

例えば、100社に対して調査した結果、40社が「良い」、40社が「普通、20社が「悪い」と回答した場合のDIの計算方法は40%-20%=+20%(ポイント)というように計算されます。

DIに指数化することにより長期の動向を時系列に見るような場合に計算がしやすくなることから、日銀短観などではDIという指標に集約しています。
このほか、以前までは内閣府が発表する「景気動向指数」もDIで算出されていましたが、平成20年からはCI(コンポジットインデックス)によるものと変わっています。
DIは現在の状況が良いのか悪いのかを調べるのに有効な方法とされていますが、問題としてどれほど良いのか、どれほど悪いのかを調べるには適していないとされています。この程度の大きさを調査うする場合は、指標としてCI(コンポジットインデックス)を利用する方が優れているとされています。

CI

CI(シーアイ)とは、景気状況の度合いを調査する指標の計算方法です。「C.I.」とはComposite Index(コンポジットインデックス)の略称。現在では内閣府が行っている景気動向指数で平成20年からさ移用されている計算方法です。

CIの計算方法は、CIの各指数に採用されているそれぞれの経済指標を基準年からの変化率を平均することにより合成変化率を求めて、その累積により指数化したものとされています。CIの特徴は、景気の山の高さや谷の深さなど景気が今どの位置にあるのかをDIで計算する場合と比べて求めやすいという特徴があります。

2008年11月13日

QE

QE(キューイー)とは、Quick Estimationの略称で内閣府が四半期(4ヶ月)ごとに発表しているGDP速報値のことです。四半期ごとのGDPの速報値について発表しているもので国民経済計算速報とも呼ばれます。なお、QEにおけるGDPはGDE(国内総支出)から計算されたものでやや正確性に難があります。

そもそも、内閣府は通常1年に1回、GDPをはじめとした統計データを公表していますが、この統計(国民経済計算確報)は正確である反面に様々な計算が必要であることから公表時期が遅いという欠点があります。そこで短期的な景気の動向などを広く公表するために行われるようになったのがQE(国民経済計算速報)です。速報のため確報ではありませんが、短期的な景気動向の見通しなどに活用されます。

2008年11月17日

GNP

GNP(ジーエヌピー)とは、国民総生産とよばれる経済統計の一つです。一国の国民全てが一定期間(1年間)に生産したモノとサービスの総計を示す指標です。GDPと似ていますが、国外での生産も統計には含まれます。対して外国人の国内での生産は含まれません。

GNPとGDPは混同しやすいのですが、GDPは日本という国の中での経済活動を見るもので、日本という国内にある全ての企業や人が生産する付加価値の合計です。対してGNPは日本人という国籍を中心とした経済活動を見るもので、国内・国外を問わず日本人(日本法人)が国内・海外で生産した付加価値の合計となります。
かつてはそれぞれの国の経済力を示す指標としてはGNPが一般的に利用されていましたが、日本企業や日本人が海外で仕事をするなどして活躍することがグローバル社会の進展に伴い当たり前となってきており、純粋に日本という国の経済力を示す指標としてGNPが不適切となったことから、GDP(国内総生産)が用いられるようになりました。日本では1993年から経済統計としてGDPを重視するようにしています。

ただし、近年では、日本人(日本法人)の海外での利益や経済規模を捉えるといった観点からGNPの利用価値についても再認識されつつあります。

国民所得

国民所得(こくみんしょとく)とはNI(National Income)とも呼ばれる経済統計の一つです。国民がある一定期間(通常は1年)に獲得した所得の合計値を指します。国民所得の計算方法は、国民総生産(GNP)から固定資産減耗(減価償却)を差し引いた国民純生産(NNP)からさらに間接税(消費税など)を差し引くことで計算することができます。

国民所得は日本という国の所得をGNPやGDPなどよりもより詳しく見るために調べられる経済統計の一つです。なお、国民所得は「どこで生じたのか?」「どこへ流れたのか?」「何に対して支出されたのか?」という三つの側面から見ることができます。これらは順に「生産国民所得」「分配国民所得」「支出国民所得」と呼ばれます。なお、それぞれの国民所得の金額は同じになり、これを「面等価の原則」と呼びます。

三面等価の原則

三面等価の原則(さんめんとうかのげんそく)とは、マクロ経済における基本的な考え方で、一国経済は「生産(付加価値)」「分配(所得)「支出」という三つのどの観点から見ても、理論的にはその金額は等しくなるという意味です。経済をマクロ経済の観点から見る際の基本原則の一つです。

生産とは、企業等が産生した財から中間投入額が差し引かれた付加価値として計算することができそれは生産主体である企業に帰属します。そしてその利潤は「賃金や配当(分配)」となります。そのため、生産と分配は等しくなります。支出とは民間最終消費支出・政府最終消費支出、民間住宅投資、民間設備投資、民間在庫投資、公的在庫投資、公的固定資本形成、などのことを指します。なお、生産と支出の関係については、財やサービスの生産を消費や投資に置き換えるだけですので、生産と消費は等しくなります。よって、生産=分配=消費の額は等しくなるということになります。

2008年11月18日

インフレーション

インフレーションとは、物価が継続的に上昇することを指す。インフレという略称で呼ばれることの方が多い。インフレは物価が上がるという意味と貨幣価値の低下という両方の意味があります。つまり、インフレ経済においては、今年の100円は来年には現在の100円の価値がないということになります。

インフレが進むと明日買うよりも今日買った方が得ということになり、インフレ経済の初期段階では消費が拡大し、貨幣の流通量が増大し景気はよくなっていきます。買い手が多くなることにより需要と供給のバランスで物価はさらに上昇していきます。しかし、過度のインフレが進むと人は銀行に預金をせずに消費に回すようになり、銀行は資金不足となり企業に対して事業資金の融資ができなくなってしまいます。
そのため、企業側も事業の拡大が難しくなり、事業縮小を図り人員の整理などにより失業者の増大を招いてしまいます。さらに、インフレが継続して短期間に物価が数倍、数十倍と上昇することをハイパーインフレーション(ハイパーインフレ)と呼びこうなると貨幣という存在意義自体が信用を失ってしまいます。
政府や日銀(日本銀行:中央銀行)はこうした過度のインフレを押さえ適切な水準のインフレに抑えるために適切に金利の引き上げなどの金融引き締めを行い、過度なインフレを抑制しています。

ディマンドプルインフレ

ディマンドプルインフレとは、需要の高まりにより供給が追いつかないために起こる物価の上昇(インフレーション)のことを指します。需要インフレとも呼ばれ、一般的にディマンドプルインフレが起こる原因としては経済に龍打つする貨幣量の増大(マネーサプライの増大)により発生するといわれており、政府や中央銀行(日銀)はマネーサプライのコントロールなどにより対応を行います。

コストプルインフレ

コストプルインフレとは、生産コストが上昇したことにより起こるインフレーション(インフレ)のこと。原材料価格や賃金などが上昇することにより価格が上昇することでコストインフレとも呼ばれます。コストインフレの原因としては、資源価格上昇による資源インフレ、賃金水準のアップによる賃金インフレなどがある。

コストプルインフレの場合、ディマンドプルインフレと比較してその原因が一国の範囲外となることもあり、そのコントロールは難しいとされています。特に原材料価格の高騰などは日本のような加工貿易を主とする国家にとっては、自国外のことであるため解決は容易ではなく多国家間での取り組みが必要になります。例えば、原油価格の上昇は燃料コスト、電力コスト、輸送コストなど多くの分野に影響を与えてコストプルインフレを起こしやすいという傾向があります。
加えてコストプルインフレは自国内の需要の増減とは無関係に発生することがあるため、そうした場合は国の景気に対して大きな悪影響を与える恐れがあります。

インフレギャップ

インフレギャップとは、ディマンドプルインフレなどにより需要の増大に対して供給が追いつかないような場合、供給量の少ない財やサービスが希少価値により価格が上昇した差額のことを指します。この場合、従来の価格と上昇後の価格差のことをインフレギャップと呼びます。対義語はデフレギャップ。

デフレギャップ

デフレギャップとは、デフレーションによる価格差を示す用語で、供給量の増大に伴う相対的な需要の減少による価格の低下額のことを指します。例えば、100円の商品があり、その商品が過大に生産されたことから値崩れを起こし80円になった場合、この20円がデフレギャップと呼ばれる。対義語はインフレギャップ。

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